OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

ローン・レンジャー

   2013/08/06

10代の時期、白黒テレビの30分番組で楽しく見た作品であった。白馬にまたがったローン・レンジャーが、ウィリアム・テル序曲の音楽に合わせて「はいよ~、シルバー!」と颯爽と現れる、「キモサベ~」「インデアン、ウソつかない」など楽しかった! しかし半世紀も前のそんなレトロなテレビ作品を、どんな風に映画に作り変えるんだい?と及び腰で見たら、これが十分楽しい内容となっていたので一安心しました。 内容は、縦糸としてローン・レンジャーとインディアンのトントの復讐譚なのだが、そのキャラが実にユニークな設定になっている。 ローン・レンジャーは前身はまじめな検事で、法の下による正義を貫こうとしているので、あくまで裁判によって悪人を裁くことを正義と考え、武器を持たないことを是としている。片やトントは、問答無用、悪い奴は己の手で始末することを是としている。人を裁くことに対しての姿勢が全く反対の考えなので、このコンビは全然かみ合わない、という設定になっているのだ。対してふたりの共通の敵は、己の目的のためには他人を抹殺することなど、蚊を殺すほどにしか思っていない残虐な男であり、そのバックには大陸横断鉄道による巨大な利益を目論む資本主義の権化みたいな連中がついている。そんな連中だから邪魔になるものに対しては容赦なく襲ってくるのだ。 せっかくトントの霊力によって(と言うよりは白馬の選定によって)死の世界から蘇ったローン・レンジャーは、そのような無法な連中に武器を持って立ち向かうのではなく、法の正義のみで裁こうと頑張るので、トントはイライラしてしまう。そのチグハグさがこの作品を面白いものにしているし、わざわざそういう設定にしたことによって、往年の人気番組を現代に映画化しながら、それは決してレトロ趣味ではなく、現在武器所持社会への痛烈な皮肉を込めた作品としているように思える内容となっているのだ。 遊び心満載のこの作品(1933年の西武博物館から始まるシーンは、「ローン・レンジャー」がラジオ劇で1933年からはじまったことに対するオマージュだと思うし)は、随所に西部劇全盛期のパロディを詰め込みながら、もうジャンルとして片隅に追いやられた西部劇への愛情をたっぷりと残し、内容の仕込みを変えることによって西部劇の回帰を願った作品ともなっている。特に列車シーンのド迫力ある撮影は本物を使用することによってCG多様の現在の映画へのアンチテーゼともなっている。 ぼくのチケット代は2,300円を出してもいい作品でした。 星印は3つ半差し上げたい作品です。

5点満点中3.5点 2300円
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