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衛藤賢史のシネマ教室

ゲノムハザード~ある天才科学者の5日間~

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   2014/01/29

サントリー・ミステリー大賞読者賞を受賞した司城志朗の小説「ゲノムハザード」を「美しき野獣」(06)の監督キム・ソンスが原作に惚れ込み、自ら映画化することを熱望し企画した作品であり、韓国・日本の映画界が共同して作った作品である。
原作は日本が舞台であるが、キム監督はソウルまで広がる内容に脚色し、韓国人キャラクターも新たに多く加え、スケールアップした作品にしようと試みている。デザイン会社に勤務する石神武人は、真面目な会社員であり、私生活では新婚の妻・美由紀と幸せな生活を送っていた。そんな石神が家に戻ると妻が殺されていた。呆然とする石神だが、そこに警察と名乗る男たちが現れ石神を連行する。男たちは石神のことを<オ・ジヌ>と呼び、混乱する石神は隙をついて車から逃げ出し、通りかかった車に飛び乗り助けを求める。その車を運転していたのはソウルから派遣された女性記者カン・ジウォンで、興味を持った彼女の助けを借りてなぜ自分が訳の分からない事件に遭遇したのかを探り出そうとする。そして判明したのは石神は韓国の天才的な生命科学者オ・ジヌであり、あることから石神の記憶を脳内に上書きされ自分が日本人の石神の人格を有してしまっていた、ということが徐々にわかってくる。
その研究はオ・ジヌが日本の遺伝子研究所で認知症の研究中に発見したものであり、そのウイルスを使えば他人の記憶が自分の記憶となる、という恐るべきものであり、韓国の製薬会社などが絡みはじめて、石神となったオ・ジヌを血眼で探していたのだ。
カン・ジウォンの協力で自分が何者であるかを理解し始めた石神は、妻・美由紀の殺害の真相を探っていくのだが、遂に判明した真相とは…。そして石神とオ・ジヌが同居した脳内が破壊されていく時間のリミットが迫る中で彼の最後にとった行動とは…。
現代の生命科学の最先端の研究を扱った出来事の内容は、今までの映画のジャンルとしては新鮮な題材であったが、登場人物の相関関係がゴチャゴチャして分かりにくい描写となっており、かなり人物の繋がりと自分探しの過程に省略が多いので、ぼくら観客はその内容の繋がりの行間を映画を見ながら整理しなければならない、という欠点が目立つ作品となっている。しかし、奇妙に印象が残る不思議な作品である。主役の西島とキム・ヒョジンは魅力的な演技を見せてくれる。キム監督の意欲的演出は認めるが、張り切り過ぎて少し空回りしてしまった感がある。ぼくのチケット代は、1,700円くらいかなと思います。
星印は2つ半差し上げます。

5点満点中2.5点 1700円

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