OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

舞妓はレディ

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   2014/09/16

「マイ・フェア・レディ」(1964)の日本版とも言うべきこの作品は、主役に抜擢された上白石萌音のほっこりとした愛くるしい容貌が内容とぴったりマッチし、楽しい和製ミュージカルとなっている。
京都の下八軒にある老舗のお茶屋「万寿楽」に、少女・春子が突然飛び込んできた。しかし、もっさりとした格好の上、何を喋っているかわからない深い鹿児島弁と津軽弁の方言に加えて後見する人物もいないときては、舞妓になれるわけがない。お茶屋の女将の千春はピシッと断るが、居合わせた大学教員の京野と千春の贔屓筋の北野のとりなしで舞妓見習いとして働くことになる。京野は言語学者であり春子の深い方言を京言葉に矯正する役目を受け持つことになる。こうして春子の舞妓への修行生活がはじまった。
京野の大学に通って京言葉の喋り方を習いながら、お茶屋のしきたり、唄や舞踊の習い事を女将の娘の舞妓・百春(もう20代後半というのに新たな舞妓の後継者がなく今だに芸妓になれずにいるのだ)や芸妓の里春、豆春たちから特訓されながら、さらに厳しい芸事のお師匠さまに舞踊・お囃子などを習う毎日の連続。春子は自ら志望した舞妓の道、懸命に努力するが、肝心の京言葉が京野のユニークな指導にもかかわらず馴染んだ方言言葉になってしまいコミュニケーションがうまくいかず突然失語症になってしまう。
しかし、京野の機転と女将の千春のやさしい励ましに回復し、ついに舞妓・小春としてデビューすることになる。だがなぜ、春子はこんなにしきたりの厳しい舞妓を志望してきたのか?それは見てのお楽しみということで・・・。
周防監督が『ファンシイダンス』(1989)、『シコふんじゃった』(1991)、『Shall we ダンス』(1996)などの初期のマイナーな事象にスポットを当てコミカルに愛しく描いたコメディの世界に原点帰りしたこの作品は、古いしきたりを厳守する京の花街(かがい)を舞台にして方言のきつい少女を、雅な京言葉を使う少女に変身させる過程を描きながら、丁寧にかつユーモアたっぷりと古都・京都の夜の世界を彩った芸妓・芸事のシステムをミュージカル仕立てで演出してきた。およそ20年前に企画していた作品というが、主人公の春子を演じた上白石萌音なしではこの企画が実現できたかな?と思うほどの適役である。小柄で日本的体型、典型的日本顔の彼女を起用した瞬間、この作品の成功を確信したと言っていいだろう。大事に育ててもらいたい娘である。
ぼくのチケット代は、2,300円出してもいいと思う作品でした。
星印は、4つ差し上げます。

5点満点中4点 2300円

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