OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

ふしぎな岬の物語

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   2014/10/14

森沢明夫のオムニバス小説「虹の岬の喫茶店」を映画化したこの作品は、一言で言うと透明感のあるきれいな内容の映画となっている。
森沢さんの談によると「千葉県鋸南町の人の釆ないような岬の先端にぽつんとカフェがあったのでびっくり」し、またその内装のレトロ感に感じ入り小説になると直感したのだそうだ。
このいわば一話ずつ完結のオムニバス小説を、岬の先端にある<岬カフェ>の店主・相木悦子の喫茶店に中心に、そこに集う風変わりな人々の日常を措いたドラマに仕立てたのがこの作品である。
柏木悦子は、愛した画家である夫を亡くして以来30年間、岬の先端で<岬カフェ>という喫茶店を経営している。ある事情で幼い頃引き取った甥・相木浩司ももう30代となっており、近所の小屋で一人暮らしをしている。悦子を慕い何でも屋をしながら悦子を守っている、町の人気者だが自由きままな性格で早とちりでよく問題を起こす男でもある。そんなふたりの関係を30年間ずっと暖かく見守ってきた常連客のタニさんは、悦子への思慕を告白できないまま大阪への転勤の話しが迫ってきていた。
また漁師の徳さんも悦子の立ててくれるコーヒーが毎日の生きがいの常連だが、近頃体調が思わしくない。そんな折、娘・みどりがダメ男と別れて帰ってきた。悦子は病院に入院した徳さんを見舞い、みどりに喫茶店の手伝いをさせる。
そんなアットホームの雰囲気の悦子の店には町の常連客以外にも様々な客が来る。
母を亡くし東京から父親と虹を追いかけてきた幼い少女・希美と悦子との出会い。また生活に困り<岬カフェ>に忍び込んだドロボーさんとの悦子の暖かい語り合い。誰に対しても深い同情と愛情をそそぐ悦子だったが、色々な事情で大切な人たちが去っていく中で悦子の心の中で深い孤独感が生まれてくる・・・。
それぞれの悦子を囲むエピソードを通して、人々の善なる心、によって通い会うピュアな愛情をある意味淡々と描くこの作品は、その透明感の感じるきれいな内容によって観るぼくらの心を癒してくれる。しかし同時にオムニバスを一本のドラマに仕立てる過程の取捨選択のむつかしさをを感じさせる内容とも正直なっている作品である。
ばくのチケット代は、2000円出してもいい作品かなと思っています。
星印は、3ッ半分さしあげます。

5点満点中3.5点 2000円

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