OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

ストックホルムでワルツを

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   2015/01/06

1960年代、スウェーデン語でジャズを歌い、世界中のジャズ・ファンを魅了したモニカ・ゼタールンドの半生を描いた作品であり、当時の代表的ジャズ・ミュージックの名曲の数々を堪能できるのも魅力のひとつとなっている。
モニカは音楽家であった父・ベントの血を受けジャズ歌手としての豊かな才能を有する女性だった。プロの道を諦め田舎にひっ込んだ父・ベントと違い負けん気が強いモニカは、田舎の町で電話交換手の仕事をしながらストックホルムでジャズを歌っていた。若くして離婚し娘・エヴァ=レナと両親の4人で暮らしながらプロのミュージシャンとして成功することを目指していた。そんなある日、モニカの歌を聴いた評論家からジャズの本場アメリカで歌う仕事の誘いに乗りニューヨークに赴く。しかし金髪で美貌の白人が黒人とステージを同じくすることを嫌う興行主によってクビになった上、エラ・フィッツジェラルドから「人真似みたいな歌い方はダメ」と叱責され失意の気持ちでスウェーデンにもどる。父・ベントは幼い娘を両親に預けたままドサ回りでジャズを歌うモニカを怒るが、その旅でベーシストのストゥーレと知り合いスウェーデン語でジャズを歌うことを助言され詩人・ベッパの歌詞で歌ってみる。母国語で歌うジャズは、モニカの感情表現を豊かにしスウェーデン中に評判となり一躍時の人となった。スターの階段を登りはじめたモニカは、両親の不安をよそにセレブリティの世界の一員になることを望み「私は好奇心の強い女」で有名になった映画監督・ヴィルゴット・シェーマンと同棲をはじめ娘を引き取り豪邸を現金で買い取りゴージャスな生活をはじめる。そんなモニカをストゥーレは眩しく眺めるだけだった。しかし、スウェーデン代表でヨーロッパ選手権に出たモニカは慣れないポップスを歌い失敗する。それが原因でモニカは酒に溺れヴィルゴットとも別れ体調を崩してしまう。入院したモニカは退院後、原点に戻ろうと決意しジャズ・ピアノの巨匠ビル・エヴェンズに自分の歌を送る。それはベッパの歌詞でのエヴァンズの曲『ワルツ・フォー・デビー』だった・・・。
己の才能を信じ、ひたむきに頂上を目指すモニカ・ゼタールンドの半生を描くこの作品は、栄光の影に潜む負の部分の描写でもあり、それを真っ向から受け止めながら懸命に生きようとする強い女性の生き様の描写でもある。その生き様の強さは同時に哀しみを同居させるということをしみじみ感じさせてくれる作品であるのだ。
ぼくのチケット代は、2,000円を出してもいい作品でした。
星印は、3つ半差し上げます。

5点満点中3.5点 2000円

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