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衛藤賢史のシネマ教室

グランドフィナーレ

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   2016/06/01

奔放な作劇術と、ため息の出るような華麗な映像美の手腕で、世界中の映画人からF・フェリーニの後継者と目されているパオロ・ソレンティーノのアカデミー外国語映画賞を受賞した「グレート・ビューティー/追憶のローマ」につづく作品である。
世界的に名を馳せたイギリス人音楽家フレッドは、もう80歳。今は現役を引退してスイスにある超豪華なセレブ専門のホテルに長期間の滞在をしていた。
その高級ホテルではブヨブヨに太ってしまったかつてのサッカーの名選手(マラドーナかい?)や、大富豪の老人たちなど現役をリタイヤした有名人が逗留している。
そしてフレッドと幼馴染みで長年の親友である映画監督のミックもこのホテルに泊まっているが、彼はまだフレッドと異なり若いスタッフたちをこのホテルに招集して新作の構想や、その資金繰りを考えている現役バリバリを自称する元気老人だ。
そんな対照的なふたりだが、共に人生のカレンダーが残り少なくなったことは自覚しており、若い時分の思い出話などを話し合っているのを、フレッドの娘で付き沿っているレナが見守っている。
そんな折、イギリス王室からの使いが来て、エリザベス女王がフレッドの有名曲である「シンプル・ソング」をスミ・ジョーの歌唱で、フレッド自身が指揮するコンサートを開いてくれることを希望しているという依頼が入る。
が、女王の希望であろうと、もう引退したのだからと、なぜか?頑なに断るフレッド。一方、リックの方も自分がスターにした大女優ブレンダの出演あってこそ、今構想している新作の製作費が集まるのに、まだ返事がなくイライラしていた。
そして再度の女王からの出演依頼の使いがフレッドを訪ねてくるがのだが…。
人生で欲しいものをすべて手にしたはずのフレッドとリックの晩年を、アルプスのほとりの超高級リゾート・ホテルを舞台にして描くこの作品は、パアロ・ソレンティーノ監督のめくるめくような映像美の中で、間奏曲のように入るシュールな登場人物の描写を織り交ぜながら、晦渋の残るふたりの人生の過ごし方を観客であるぼくらの脳裏にじっくりと刻み込んでいく。
その様をマイケル・ケインとハーヴェイ・カイテルの老優ふたりの悠々とした演技が見事に支えることによって、人間の生きることとは何か?を考えさせられる人生哲学たりうる作品となっているのだ!
ぼくのチケット代は、2,300円出してもいい作品でした。
星印は、4つ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2300円

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