OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

少女ファニーと運命の旅

   2017/09/12

ナチスによるユダヤ人の迫害について、世界中が数多くの映画を発表しており、ぼくら日本人の大多数はその凄惨な概要について熟知している国民だと思う。
そしてこの作品は、13歳の少女ファニーをリーダーとして、9名のユダヤ人の少年・少女が様々な人の助けを借りてフランスから当時中立国であったスイスへと脱出しようとする命懸けの旅を描く、事実に基づいた話しであり、年端もいかない少年・少女のみという点でぼくらの胸をはげしく打つドラマとなっている。
1943年、ナチス・ドイツの占領下にあったフランス。ユダヤ人への迫害の手はここにも迫っていた。大人たちはせめて子供たちの命は守りたいと、支援者たちが密かに運営する(ユダヤ人でない一般のフランスの人々が運営。しかし見つかって摘発されると、その人々も収容所送りとなる、命懸けのボランティアなのだ。当時のフランスは親ナチスのヴィシー政権下なので国家は守ってくれない)児童施設に子供を匿ってもらっていた。ファニー(レオニー・スーショー)はふたりの妹エリカ、ジョルジェットとその施設で生活していた。しかし密告者(どうも服装から神父みたい?)のせいで施設は閉鎖され、ユダヤ人迫害のゆるいイタリアのムジェーヴに移動する。この児童施設の責任者マダム・フォーマン(セシル・ドゥ・フランス)は厳しい人柄で責任感の強い人であった。だがムッソリーニが逮捕され、ナチス・ドイツがイタリアを占領するという情報が入り、マダム・フォーマンは、施設を閉鎖し、子供たちをスイスへ逃がそうと決意する。列車に乗せ国境沿いのエンヌマスに行かせ、車で先回りしたマダム・フォーマンが引率する計画だったが、彼女は現れない。頑固な性格のファニーを見込んでいた彼女はもしもの場合「あなたがリーダーでスイスへ」と言われていた。もう子供たちの才覚だけでスイスを目指すしかない。幾多の困難の待つこの命懸けの旅を13歳のファニーをリーダーとする9名の少年・少女たちは突破できるのか・・・。
事実に基づいたこのドラマは、戦闘シーンは出てこない。しかし、戦争という極限状態の中、命を懸けて民族・宗教を超えて子供たちを守ろうとするヒューマン精神の尊厳さを描いていく過程を見せながら、戦争という行為の愚かさを余す所なく描ききった!親を慕いながら、束の間の平穏の中、子供たちが無邪気にたわむれ合うシーンなど涙なくしては見られない。このきな臭い世情の中、タイムリーな作品だと思うし、平和ほどすばらしい物はないと、しみじみ思わせる佳作であった。
ぼくのチケット代は2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2400円
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