OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

希望のかなた

   2018/01/16

フィンランドの代表的監督(日本で言えば小津安二郎かな)であるアキ・カウリスマキの難民を扱った作品(フランスで撮った「ル・アーヴルの靴みがき」につづく難民シリーズの2作目)である。2017年のベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した作品!淡々とした描写の中に、軽いユーモアとペーソスを織り込みながら、庶民のまなざしで時代を読むのに冴えを見せる演出方法を崩さない姿勢を堅持する名監督なのだ。
シリア難民のカーリド(シェルワン・ハジ)は、ポーランドからの貨物船に密航する形でフィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。父母や弟をシリア内戦で亡くし妹とヨーロッパに避難し、その途中妹とはぐれてしまい妹の消息を追ってヨーロッパ各国を遍歴していたのだ。カーリドは難民問題にやさしいと言われるフィンランドで難民申請をして生き別れた妹を見つけて暮らそうと考える。しかし、その難民申請は却下されシリアに送還されそうになり、やさしい心根の女性職員の転機で収容所を逃げ出す。だが、ヘルシンキの街中にもヘイト主義に乱暴な連中がおり、とあるレストランの前に逃げ込む。その;ゴールデン・パイント;のオーナーのヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)は、人生の再起を懸けて有り金を残らず裏カジノでポーカーにつぎ込み取得した大金でレストランを開いていた男だった。ヴィクストロムは何も言わずカーリドを雇い入れる。世間からはみ出たようなオーナーと従業員たちの中で、カーリドも仲間となり、このレストランで働きだす。が、難民に寛容であるはずのフィンランドもヨーロッパを覆う難民問題で苛立つ不寛容な市民たちの目が光っていた。そんな中、ヴィクストロムやミルヤ(ヌップ・コイブ)たち従業員の庇護の下で懸命に働くカリードの下に収容所の仲間だったイラク人から妹の消息が分かったという知らせが入った・・・。
ヘルシンキ入国からレストラン店員までのカーリドの流れを淡々とした描写で綴りながら、カリードとヴィクストロムのふたりの人生を生きる様、難民申請のヨーロッパの有り様、一部の市民の不寛容、などなど庶民目線で描くこの作品は、政治情勢的問題を内容にしない分だけ、見るぼくらの胸にグサリと突き刺さる!同時に、中東やアフリカ諸国の内戦により出口の見えないドロ沼へと突き進む難民問題への対応に苦悩するヨーロッパ諸国の有様が、小国フィンランドを通して複雑なモザイクの一片をかいま見せてくれる内容となっているのだ!
主役に抜擢されたシリア人シェルワン・ハジの悟り切ったような表情の演技にも注目!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした!
星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2400円
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