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衛藤賢史のシネマ教室

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

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   2018/04/11

細かいショットを重ねながら、澱みなく流れるようなリズムで進ませる映像技術に長けた、S・スピルバーグ監督の真骨頂が発揮されたポリティカル・サスペンスな作品となっている。

物語は1971年、ベトナム戦争の渦中からはじまる。R・マクナマラ国防長官に命じられベトナムに赴いたD・エルズナム(マシュー・リス)は、<ペンタゴン・ペーパーズ>という国家機密の文書を作成するメンバーだったが、戦争現場の状況とマクナマラが世間に発表した報告の乖離から、密かに文書をコピーし<NYタイムズ>紙の辣腕記者にリークし、同紙によって発表された。ニクソン政権は、すぐさま同紙を国家の安全保障を脅かすとして記事の差し止め命令を連邦裁判所に要求した。その頃、<ワシントン・ポスト>紙は、夫の死によって社主となったキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と重役たちの発議で株式公開の準備中だった。キャサリンは、40才過ぎまで専業主婦で慣れぬ新聞社経営に四苦八苦しながら経営学習を必死で努力していた最中であり、女性が経営者という当時の風潮では有り得ぬ環境の中、優秀な人材を求め情熱的で何者も恐れないベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)を編集主幹として起用していた。
そのベンが、<ペンタゴン・ペーパーズ>に食いついた。
ローカル紙であった<ワシントン・ポスト>を大手にするには、政府の介入で苦境に陥った大手の<NYタイムズ>紙の記事の追随をし政府を相手に戦うと考えたのだ。マクナマラをはじめ政府の高官とも親しい上流階級のキャサリンは、政府を相手に戦ことを悩む。しかし、友情を培った叩き上げのベンの新聞記者魂に共感するキャサリンは心の葛藤の中である決心をする・・・。

キャサリンとベンの堅い友情を軸にした展開でありながら、報道という使命感に燃える新聞社の克明な取材ぶりをスリリングに描いたこの作品は、そのテンポのいい演出によって見るぼくらが固唾を飲んで見る一級のサスペンスに仕上がっているのだ!当時のアナログな印刷風景を含め、時代考証のすべてを嘘なくスクリーン上に再現したスピルバーグ監督のディテールの細やかな演出も見物のひとつになっていた。
ぼくのチケット代は、2400円出したい作品でした。
星印は、4ッ半さしあげます。

5点満点中4.5点 2400円

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