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衛藤賢史のシネマ教室

万引き家族

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   2018/06/13

カンヌ国際映画祭は、是枝監督の作風に好意を抱いているので、この作品はその延長線上でパルムドール賞を獲得したのかな?とつまらん考えを持って見たが、それはぼくの邪推でした。この「万引き家族」は確かにパルムドール賞を受賞するにふさわしい家族の在り方を考えさせてくれる世界性のある内容となっていました。主演のリリー・フランキーさんは、芸短大付属緑丘高校出身で大分県に関係の深い俳優なので、なおさら嬉しいニュースとなりました!
 
東京の下町。今にも壊れそうな古い家屋に住む家族は、家主の初枝(樹木希林)の少ない年金を目当てに中年の治(リリー・フランキー)と妻・信代(安藤サクラ)、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹・亜紀(松岡芙優)という5人暮らし。
治と信代は、一応仕事してるが薄給の雇い仕事で家計の足しにはならない。そこで日常用品は、治と祥太が万引きで賄っているのだ。治はガキ大将のまま大人になったような邪気のない性格で、万引きも罪の意識もないスリルの延長みたいに考え、祥太にもそう教えている。そんな最低生活をおくりながら家族5人は、毎日それを不満に思わず狭いボロ家で楽しく暮らしていた。そんな生活に、冬の寒い日の夜、近所の団地の隅っこに震えていた幼女(佐々木みゆ)を、治と祥太は家につれて帰る。信代はその子に<りん>と命名し世話を焼く。
家族一同は、りんを可愛がり家族の一員に加え前にも増して笑いの絶えない生活をするのだが・・・。
 
世間から見たら眉をひそめられるような最低生活をしながら、家族全員が寄り添い笑いのとだえる事のない生活ぶりを見せる前半の暮らしぶりの描写は、頼むからこんな生活がいつまでもつづいて欲しいと願うような気持にさせてくれる!破天荒だが微笑ましい家族同士の心の結びつきを描いていき、後半に至って一気に<家族という単位は一体何なのか?>と見るぼくらの心にグサリと突きささるような鋭さで迫ってくるテーマによって、この作品は見事に秀逸な内容と化していくのだ!見終えた後、深く心に沈殿する普遍的テーマを、このような内容で劇作化した是枝監督の手腕に酔う作品であった!それにしても是枝監督の子役の使い方の上手さは驚嘆するばかりであった。もちろん樹木希林、安藤サクラ、リリー・フランキーの自然体の演技にも脱帽である。
ぼくのチケット代は、2700円出してもいい作品でした。
星印は、5ッさしあげます。

5点満点中5点 2700円

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