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衛藤賢史のシネマ教室

真実

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   2019/10/15

ベネチア国際映画祭のコンペティション部門のオープニング映画として上映され話題となった作品。これは日本人監督としてははじめての事であり、是枝監督の世界的評価が定着した証しでもあるのだ!

フランスが生んだ国際的大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)は、70歳を過ぎても現役として活躍しながら自伝本「真実」を出版した。その出版を祝うため、母とは距離を置きアメリカで脚本家となった娘リュミール(ジュリエット・ビノシュ)が、アメリカ人のテレビ俳優の夫ハンク(イーサン・ホーク)と娘シャルロットを連れてパリに帰ってきた。リュミールは、私生活では奔放だったファビエンヌに精神的確執があり母から離れアメリカに渡っていた。が、はじめて自伝本「真実」を読んだリュミールは困惑する。そこに書かれた内容は、リュミールの知る限りでは全く真実ではないのだ。家族との私生活も、リュミールが慕った母とのライバルであった女優サラの事も、すべてがファビエンヌによって独断的に省略されたり脚色された内容となっていた。しかしファビエンヌは、その指摘に「私が思った事が<真実>なの」と言い切る。ギクシャクした感情のまま、ファビエンヌの新作の撮影を手伝うことになるリュミールは、主演女優(リュディヴィーヌ・サニエ)にサラの面影を見る。さらに、長年にわたって献身的にファビエンヌに尽くした秘書、離婚されたリュミールの父(自伝では死んだとされる)の登場などによって混迷を深める中、リュミールは、生涯大女優を貫き通すファビエンヌの心の孤独がしだいに分かってくるのだが・・・。

<家族とは?>を作品のテーマの芯に据えた内容を撮りつづける是枝監督は、フランスでも節を曲げずに、大女優を取り巻く家族のあり方を、娘の目を通して登場人物たちそれぞれの精神の深淵を探ろうと試みる。しかし今回は表層的な描写が多くなったかな、とぼくは思う。登場人物の掘り下げに酷がない感じがするのだ。特に作品の芯になるジュリエット・ビノシュが演じるリュミールの心的変化の過程に素直に感情移入できなかったのだ。これはぼくが日本語吹き替え版を見たせいかもしれない!どうしてもフランス映画を見ているという感覚が稀薄になり馴染まないままに流されるように鑑賞したせいかも?
ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。
星印は、3ッさしあげます。

5点満点中3点 2100円

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