OBS大分放送
衛藤賢史のシネマ教室

私のちいさなお葬式

   2020/01/14

今はあまり上映されないロシア映画だが、高齢化社会での生き方という世界共通のテーマを、ひとりの女性を通して淡々とユーモアを交えながら描いていく作品なのだ。

ロシアの小さな村で教員をしながら、先立った夫を忍びつつひとりで息子を育てあげたエレーナ(マリーナ・ネヨーロワ)はもう73歳。息子のオレク(エヴゲーニー・ミローノフ)も中年となり都会で生活しており、今はひとり暮らしの身だ。息子に頼らず慎ましい年金暮らしのエレーナが、病院の診察で心臓疾患による余命宣告を受けてしまう。エレーナは愛する息子に迷惑をかけまいと、ひとりで自分の<お葬式計画>をはじめる。こよなく文学を愛し聡明で理知的なエレーナは、淡々と<お葬式>に必要な準備をすすめていく。役所で目をパチクリとする女性職員に自分の死亡診断書を請求し、そのための手続きに必要な遺体安置所に勤める教え子に死亡日時を作るのを手伝ってもらい、棺桶屋で棺を買い、夫の墓の横に埋葬させる墓掘り人を見つけた後、自宅でお葬式に必要な経費を算出していく。心の慰みは教え子の漁師がくれたでっかい鯉のペット(食べるはずが、ある事からエレーナのペットになったのだ!)だ。だが、そこは小さな村のこと。秘密裏に計画していたはずの<お葬式計画>は幼馴染みの親友たちにばれてしまった。特に親友であり隣人の婦人リューダ(アリーサ・フレインドリフ)はカンカンになってエレーナのところに怒鳴り込んでくる。リューダの知らせで息子のオレフもカンカンになって帰省してくる始末。そんな中、遺体安置所の教え子に無理に死亡日時を作らせた日に自分が死ななければ、教え子が罪に問われることを心配したエレーナはリューダに手伝ってもらおうとするのだが・・・。

自分の<お葬式計画>に奮闘する主人公のエレーナの姿の何とチャーミングなことか!生きていくことを心から愛し、生命のあるかぎり人に迷惑をかけずに自分自身の始末に後顧の憂いを残さないように淡々と行動するエレーナの覚悟に心を打たれる内容でありながら、同時進行でロシアの村の貧しい有様や俗事や村人たちの交流が絡むエピソードのユーモア感もたまらなく愛しいのだ!
ぼくのチケット代は、2400円出してもいい作品でした。
星印は、4ッさしあげます。

5点満点中4点 2400円
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