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衛藤賢史のシネマ教室

THE CROSSIMG 香港と大陸をまたぐ少女

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   2020/11/24

英国から香港を返還された中国は[一国二制度]制を香港に敷き、関税の優遇措置が講じられている。このドラマはそれをベースに置いた、女子高校生の行動を描くものです。

香港に隣接する中国のシンセンに住むペイ(ホアン・ヤオ)は、毎日シンセンから香港の高校に通う女子高校生。香港人の父と中国人の母は離婚し、ペイはシンセンで母と暮らしながら香港の高校に越境通学している。自堕落な母と、もう再婚してトラック運転手をしている父の間で疎外感を抱えるペイのたったひとつの楽しみは親友のジョーと、バイトなどで貯めたお金で日本の北海道に旅行して雪を見ることだった。ある日、ジョーに誘われ船上のパーティーでハオという、ジョーのボーイフレンドの青年に出会い好意を持つ。ハオは食堂で働いているが裏では、香港に与えられた関税優遇措置制で中国大陸よりも安く手に入るスマートホンをシンセンで売る密輸組織のメンバーだった。ペイが毎日シンセンから香港へ通学している事を知ったハオは、日本旅行の費用を稼ぐために高校の制服姿のままだったら怪しまれないので、2~3台のスマートホンを持ち帰り換金するバイトを持ち掛ける。なかなか旅行費用が貯まらないペイは、その話しに乗ってしまう。駅にいる公安警察にビビりながらペイはスマートホンを香港からシンセンに持ち出すのに成功する。警察も通学姿のペイにまったく関心を払わなかったのだ。そしてペイの行動はだんだんエスカレートしていくが…。

[一国二制度]という香港と中国大陸に置かれた複雑な状況などに、まったく関心を持たずに高校生活を謳歌する少女たちの屈託のない表の世界をみずみずしい描写で描いていく前半から、その制度を利用する密輸の裏の世界に関与してしまう後半の描写によって、唯一中国の民主主義世界の香港の置かれた立ち位置の複雑さを描くこの作品は、2018年製作と思うと現況の香港を知るわれわれにはある意味絶句してしまう内容となっていたのだ。そうなのだ!中国と香港は100年以上の歳月でまったく主義の異なる価値観を持ってしまっていたのだ。それを痛感させられる作品であった。

ぼくのチケット代は、2100円出してもいい作品でした。

星印は、2ッ半さしあげます。

5点満点中2.5点 2100円

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